政治経済

民間企業の社会人1年目が様々なトピックで言いたいこと言っちゃうブログです。

10分で読める自民党総裁選ネット討論会(2018.9.16)

 2018年9月16日にニコ生で放送された自民党総裁選ネット討論会」の内容を理解できるように、文章化してみました。偏向なく、この討論会の内容に触れられるようにするため、私自身の意見や主張は一切入れておりません。

 この記事を読み、討論会における両候補の発言内容を理解するにあたって、いくつか以下の注意点があります。

〈注意点〉

・私なりの要約、若干の補足が含まれていること

・「だ、である」調に変換されていること

・討論会では発言順が交互であったが、ややこしくなるので全て「安倍さん→石破さん」の順で書いたこと(※届出順に従った)

 

〈目次〉

◆両候補者の所信表明

◆ネット視聴者の関心の高い質問への回答と討論

①メディアでは憲法9条ばかり注目されているが、具体的に今の憲法のどこを、どう変えるべきだと考えているのか。また、その時期についてはどう考えているか。

②今の自衛隊で、現在の東アジア情勢に対応できると考えているか。それともさらなる強化が必要なのか。

働き方改革が進められているが、経済成長に向けてさらなる規制改革は必要だと考えているか。必要だとすれば、どの分野をどう変えるべきだと考えているか。

④これまで「均衡ある国土」の発展を目指してきたが、今後人口減少の中で地方発展と国の発展が必ずしも同じにならなくなってきた。今後どのように地方創生に取り組まれていく予定か。

◆最後に言い足りなかったこと、視聴者に伝えたいこと

 

 

◆両候補者の所信表明

安倍さん

『6年前、「人口が減少していく日本はもう成長できない。成長などしなくていい。」民主党政権下、諦めの壁が日本中に立ち塞がっていた。しかし、私たちは諦めず、3本の矢で挑戦し、人口が減少していく中でも経済は12.2%成長し、今年の春に高校・大学を卒業した若者の就職率は過去最高となった。1人の求職者に対して1人分の正規雇用があるという、まっとうな経済を取り戻すことができた。

 「地球儀を俯瞰する外交」を進めた結果、保護主義が台頭する中で、TPP11・日欧EPAを成立させ、日本が世界のルールづくりを主導した。国際社会の中で日本はその大きな存在感を取り戻すことができた。

 国難と呼ぶべき少子高齢化、そして、国際社会の荒波に真正面から立ち向かい、希望に溢れ、誇りある日本を平成のその先の時代に向けてしっかりと作り上げていく。私はその先頭に立つ決意である。』

 

石破さん

『20年で人口は2000万人減る。80年で7000万人減る。これはただ事ではなく、今まで経験したことがないことが起こる。1人1人の所得を上げ、1人1人が豊かになる社会を作っていかなければ、日本を維持していくことはできない。雇用の8割、経済の7割はローカル経済と呼ばれている。これを伸ばして行き、日本の社会を維持したいと思っている。そのローカル経済は東京にもたくさんある。

 社会保障のあり方を変えていく。病気になったらお医者さんにかかれる、身体が不自由になったら介護が受けられる、これを絶対に守っていかなければならない。同時に、いかにすれば病気にならないか、いかにすれば要介護にならないか、そのために仕組みを変えていく。保険のあり方、何かあったら保険ということではなく、そうならないためにいかにして保険を変えるか。社会保障のあり方を、全ての人が参加する形で答えを出し、負担もそこで検討していく。

 防災について。災害が起こらないためにどうするかと同時に、起こった時にどうするか、その対応をきちんとしていかなければならない。そのための部署を創る。それが私のやりたいことである。』

 

 

◆ネット視聴者の関心の高い質問への回答と討論

①メディアでは憲法9条ばかり注目されているが、具体的に今の憲法のどこを、どう変えるべきだと考えているのか。また、その時期についてはどう考えているか。

 

安倍さん

『昨年の総選挙において、わが党は初めて4項目の憲法改正政権公約の柱として掲げて選挙で信任を得た。憲法改正については70年間、残念ながら指1本触れられていないという現実がある。そして、平和主義などの基本原理については、石破さんが言った通り、私たちは全く変えずに維持をしていく。

 同時に4項目(「教育」「憲法9条」「参院選合区解消」「緊急事態条項」)の中で、「教育」については明治以降の日本の発展、あるいは戦後日本の再生を支えたのは人材・教育である。国家100年の計である教育について、国の基本的な考え方をしっかりと書き込んでいくべきだろう。

 そして、「憲法9条」について言えば、自衛隊をしっかりと明記することによって、違憲論争を終わらせていく責任が私たち政治家にはある。後の2項目、「合区の問題」「緊急事態の問題」等についてもしっかりと示していきたい。しかし、今まで多数を形成することができずに改正されてこなかったことから、9条についても1項2項の中に宿る平和主義が根付いている中で、それを変えることは多数を形成できないとの判断に立ち、1項2項は残し、自衛隊を明記し違憲論争を終わらせると決意した。』

 

石破さん

憲法の趣旨を示した前文には「平和主義」と「国民主権」はきちんと書き込まれているが、「基本的人権の尊重」が書き込まれていない。それはきちんと書き込みたい。そして、憲法9条についてのみならず、国民に問うことであり、国民主権に関することであるため、国民の皆様の世論を分断するようなことがあってはならない。多くの国民、多くの政党が賛成するものを優先したい。

 9条について言えば、自衛隊の明記について賛成。それと同時に、自衛隊が行動するときのルールについても明記したい。日本の国の主権、領土、国民、統治の仕組みを外の勢力が侵略してくる際に適応されるのは、国内のルールではなく、国際的なルールであるという当たり前のことを明記することは大事だ。何か緊急事態が起こった時にいろんな対応が可能な条文も憲法に書いておきたい。そのためには「基本的人権の尊重」をよく認識していきながら、人命や財産を守る改正をやっていく。』

 

〈討論〉

安倍さん→石破さん

『石破さんが言う「憲法について国論を二分するべきではない」というのは、その通りでなるべく皆さんに賛成していただくのは大切なことである。ただ、石破さんは「共産党も賛成すべきだ」と言っていたが、共産党は「憲法改正する全ての行動に反対する」ことを明確に打ち出しているので、これはほぼ絶望的だと考えている。だから、もちろん与党の中で賛成を得るのは当然だとして、野党にもお願いをしていく中において、どこまでいけば多数派が形成されたと考えるのか。あるいは、あくまでも反対する人たちがいたら、もう国民投票に付さないのかということを聞きたい。私は憲法の場合は最後は国民が決めるものだから、国民の皆様にある段階では政治家が決意して委ねるべきだと考える。』

 

石破さんの回答

『野党の時に一生懸命書いた「自民党憲法改正草案」を何度も読み返した。そこに「国民の権利と義務」の章がある。「政府は国民に対して説明する責務を負う」これに反対する政党はないだろうと思っている。二分するようなことは避けるべきであるが、できれば6割、7割の賛成をいただく。それには憲法改正の条文についてきちんと説明していくことが必要である。』

 

司会→石破さん

憲法改正には国会議員で2/3以上、国民投票過半数の賛成が必要という仕組みになているが、石破さんはそれ以上の支持が必要と考えているのか。』 

 

石破さんの回答

『国会の2/3もものすごく高いハードルだと思っている。また、その上での国民投票過半数というルール。しかし、それが51対49ということは避けるべきだ。やはり、6割、できれば7割近い賛成をいただきたいと思っている。ただし、本当に丁寧に説明をした上で国民投票にかけなければいけない。国会で2/3取ったからというだけではダメだと思っている。(例えば、)緊急事態条項にはどのような懸念があるのか、参議院衆議院、同じような国会が2つあってもいけない。参議院は6年の任期で、高い見識や地域性の加味、少数意見の尊重という特徴がある、というのが議論のポイントだと思っている。だから、地方のことを考えないのかということだけ言ってるのではなく、何のために二院制なのかを説明することが大事である。』

 

司会→安倍さん

『安倍さんはまずは国会議員で2/3以上というのを目指しているのか。』 

 

安倍さんの回答

憲法にそういった規定があるわけだから、そのルールを変えてハードルを高くするというのは間違っていると思う。6割、7割の国民の賛成を得るというのは簡単ではない。また、それがどう判断できるのかということではないかと思っている。2/3の多数を衆参で得ることができたら、あとはできるだけ多くの国民に訴えかけ、理解を得る努力を私たちが必死にやっていき、その結果、過半数を取れるかどうかということではないのか。日米安保もそうだが、平和安全法制も随分反対が多かった。しかし、現在、平和安全法制を改正・廃案にすべきと言っている人はもう2、3割しかいない。だから、そうやって段々と理解が深まっていく。ある時には政治家がリスクを負って判断しなければいけない。』

 

司会→両候補

憲法改正の時期についてはどう考えるか』

 

安倍さんの回答

自由民主党総裁として、1つの目安として「次の臨時国会には」と申し上げているが、これはあくまでも自民党の推進本部で細田本部長の下で議論していただきたいと思っている。』

 

石破さんの回答

『スケジュールありきだとは思っていない。だが、それはいつでもいいということを言っているのではない。どうやって一生懸命説明するかということが時期を早くすることに繋がっていく。条文の意味、言葉についての理解がないまま、いきなり国民投票にかけるということはあってはならない。自民党の中でも本当に草案を全部読んだ人がどれだけいるか、条文の中身をどう理解しているか、いろんな質問に誰がきちんと答えるだろうか、手続きをきちんと踏むのは民主主義の基本である。それを丁寧に、しかしながら、濃密にやることによって時期を早めることは可能である。まずはスケジュールありきなのではない。』

 

 

②今の自衛隊で、現在の東アジア情勢に対応できると考えているか。それともさらなる強化が必要なのか。

 

安倍さんの回答

『6年前の総裁選挙の際に「日本の領土、領海、領空、そして国民の命、財産を守り抜く」とお約束をした。第一次安倍政権も含めて10年間ずっと防衛費は減らされてきたが、我々はこの6年間ずっと防衛費を増やしてきた。そして、NSC国家安全保障会議)ができ、国家安全保障戦略が初めて策定された。NSCの中では大変機微な問題(緊迫する東アジア情勢)に対し、相当突っ込んだ議論をして備えている。そして、平和安全法制ができ、米空母3隻と自衛隊が初めて共同訓練が行われた。米艦の防護、米軍機の防護という任務も担い、未だかつてないほど(日米同盟の)絆が強くなった。このような日本の姿を、いろんなことを考えている国々は見ているわけである。いわば、「日米同盟の力の中の自衛隊」ということについては大変力がついてきて、同盟の力も強くなった。

 また、それと同時に、現在、「サイバー」「宇宙」「電磁波」の分野で情勢が変わろうとしている。ここで私たちは遅れをとってはいけない。今までの延長線であってはならない。』

 

石破さんの回答

『対応できないと言えるはずがない。だが、常に進歩をしていかなければいけないことである。どのような戦いが想定されるかを常にイメージしながら防衛力というのは整備をしていかなければならない。そして、我々がすべきことは、「日本に手をかけても意図した成果は絶対に得られない」ということを相手に知らせることである。ある国が軍事力を増強している時、その国が一番苦手とするものを正確に判断することが必要である(「空母には水中艦で対策」「ミサイル防衛」「アメリカの抑止力」「シェルターの設置」など)。つまり、あらゆる面において日本に手をかけても意味がないと思わせる体制作りが最も重要である。』

 

司会→安倍さん

『日本特有な島嶼部に関する防衛についてはどこまで日米同盟が当てになるかというような観点から、今の自衛隊をもう少し強くしていく必要性についてはどう考えているのか。』

 

安倍さんの回答

『「常に成長性を保つこと」が結局武力行使をしないで済む道になっていく。そこで例えば「尖閣島嶼」について、これはまずは私たち自身の力で守り抜かなければならない。そういう決意を持っていない国をどの国も守ってはくれない。だから、まずは我が国自体でしっかりと守り抜いていく。その上において、米軍が共同対処する、その中で、相手の国は勝ち目がないと判断していくだろうと思う。』

 

司会→石破さん

自衛隊を強化していくにあたっては、どの部分を一番重視して強化していくべきだと考えているのか。』

 

石破さんの回答

『私が16年前、防衛庁長官に会ったときに「なぜ日本には陸上・海上航空自衛隊はあるが、海兵隊はないのか」と尋ねた。海兵隊の仕事は危難に遭遇した自国民を助けること、領土を守ることである。陸海空の自衛隊の大きな装備では瞬時に対応できないから、そのための海兵隊が必要である。今現在は海兵隊とは名乗っていないが、そのような水陸両用の装備を持っている。そして、漁民や避難民の姿をして日本にやってくる外国からの侵略に対してどう対処するのか。これは「やってくるのは外国だが、急迫性の武力攻撃ではない」といういわゆるグレーゾーンの事象。この場合にどう対処するのかという法制も合わせて整備が必要である。』

 

〈討論〉

安倍さん→石破さん

憲法改正について1項2項を残して日本の平和と独立を守ること、そして自衛隊を明記することについて、いわば違憲論争を終えるべきだという私たちの主張に対して、石破さんは「自衛隊についてはすでに多くの国民が尊敬をしている」とおっしゃった。しかし、それは自衛隊の皆さんの「命を賭けての彼ら自らの努力」の成果なわけで、私たちがすることというのは、彼らが誇りを持って任務を全うできる環境を作っていくこと。私たちにしかできない憲法改正をしていくことではないのかなと思う。彼らが誇りを持つ、つまり、彼らの合憲性について疑いをなくしていくことは国防の根本ではないかと考えるが、どうお考えか。』

 

石破さんの回答

日本国憲法ができた時に日本は主権も持っておらず、独立もしていなかった。だから、独立を守るための組織が明記されていないのは当たり前のことである。当時それはアメリカがやることであったから。本来は独立を果たした時にきちんと明記するべきであったのにしてこなかった。それゆえ、我が党は憲法改正を目的としてできた。それと同時に、手をかけてくるのは外国の勢力であり、外国の勢力は絶対に相手の国の国内法など無視して、国際的なルールに従ってやってくる。そういうものに対して日本は国内法だけで対処することは不可能。つまり、自衛隊に負荷をかけてはいけないということ。』

 

 

働き方改革が進められているが、経済成長に向けてさらなる規制改革は必要だと考えているか。必要だとすれば、どの分野をどう変えるべきだと考えているか。

 

安倍さんの回答

『安倍政権においては、「改革」が経済成長のエンジンであった。難しいと言われた電力・ガスの完全自由化も行った。大変遅れていた医療分野の認可制度については、再生医療の審査制度がネイチャーが世界最速だと認める制度になったことで、日本に様々な企業が投資をするようになってきた。まさに改革は大切である。

 今、ロボットやAIなどの新たなイノベーションにおいて第4次産業革命が進む中、Fin-Techなど新しい分野ができたが、これは数十年前にできた規制ではとても対応できない。だから、たゆみなく常にそうした「規制改革」に取り組んでいかなければならないと考える。

 大きな目標としては「人生100年時代」を見据えた改革、「働き方改革」や「社会保障改革」を行なっていきたい。思い切って子供たちの世代、子育て世代に支援をしていく、「教育の無償化」等の改革を進めていく。同時に年金制度、医療制度も大きく変えていきたい。医療制度については「治療から予防に」しっかりとインセンティブを与える制度に、そして、年金制度については70歳を超えても受給開始年齢を選べる制度に変える。そうして、全世代型の社会保障制度に変えていく。』

 

石破さんの回答

『働く人1人1人の能力を最大限に生かしていくという形で働き方改革が行われなければいけない。今後、人口はどんどん減少し、生産年齢人口も減少していく。そうすると、1人1人が持っている力をいかに最大限に引き出していくかということ。したがって、1人1人を大事にして、どれだけ良い仕事をしてもらえるかのために、その人が持つ能力を最大限に引き出すことが重要。』

 

〈討論〉

石破さん→安倍さん 

 『方向性は全く同じであるので反論はない。ただ、「スピード感」を上げていきたいと思っている。「農地所有適格法人要件」「自動運転」「ドローン」など規制改革を地方からやっていきたい。地方においてそういった規制改革を進めていくことで、地方はずいぶんと変わっていく。このスピード感を上げていくためには、国家戦略特区のあり方をもっと使い勝手の良いものにしていきたい。そして、良い事例があれば速やかに横展開をするようにしていきたい。このスピードを上げていくということについて、安倍さんの考えはどうか。』

 

安倍さんの回答

『改革はスピードが命だと思っている。今度の第4次産業革命は一つのゲームチェンジ(技術的変革)になる。ここで時機を失えば、なかなか取り戻す事はできないのだろうと思う。確かに時間がかかった改革もあるが、我々は相当のスピード感を持って改革はできたと思う。今回の「働き方改革」は労働基準法ができてから初めての改革であ理、「農協改革」についても60年ぶりの改革を行なってきた。昨年9月のNY証券取引所の投資家の発言で、「この20年間の中で、この4年間ほどスピード感のある改革が進んだことは日本ではなかった」という評価も頂いた。だから、様々な摩擦も起こるわけだが、今後も果敢に取り組みたいと思う。』

 

司会→両候補

『今までの日本からすれば改革が進んできたと感じるところが多いが、世界と比較すると改革が遅れている印象がある(例えば、ライドシェアや民泊など)。今後はさらにスピードアップした改革をしていくという理解でよろしいか。』

 

安倍さんの回答

『例えば、「自動運転」については、そのための規制改革を日本は相当進めているつもりである。ただ、「ライドシェア」についても我々は一早く取り組んだのだが、日本というのはやはり安全性、責任の所在の明確化に非常に慎重な面もあるため、国民の理解を得ながら進めていかなくてはならないという点もある。とはいえ、世界の改革のスピードに日本が劣後することのないように力を入れていきたいと考えている。』

 

石破さんの回答

『これだけ外国の方が訪日していて、とにかく泊まる所が足りないわけである。そして、空き家もたくさんある、部屋がいっぱい空いているという状況をどうするのか。法律が通っても、それぞれの自治体が規制をかければ実際に民泊ができないということになる。どうすれば治安を維持しつつ、既存のホテルなどとシェアを取り合わずに全体のシェアを増やしていくかという観点に立てば、スピードを上げることは可能だと思う。民泊によってどれだけ経済が上がっていくかという共通認識を持っていただくために、政府としてもっと努力すべきだと思う。』 

 

 

④これまで「均衡ある国土」の発展を目指してきたが、今後人口減少の中で地方発展と国の発展が必ずしも同じにならなくなってきた。今後どのように地方創生に取り組まれていく予定か。

 

安倍さんの回答

『今までの日本は「均衡ある国土発展」の意味を取り違えて、金太郎飴みたいな地方を創ろうとして大失敗したという認識を持っている。そこで、私たちが取り組んでいる「地方創生」は中央が案を考えて押し付けるのではなく、それぞれの地方の特性を生かしていく。地方には素晴らしい魅力(農業や観光など)がたくさんある。今、世界の観光がそこにしかない風景、そこでしかできない体験を求める観光に変わってきた。

 それと同時に、今、地方から東京に人々が移動する大きな原因は若者が入学・就職で東京に移ってしまうことである。だから、地方に魅力ある大学や仕事を創っていくことが必要。仕事を創っていくという意味において、今や47の全ての都道府県で有効求人倍率が1倍を超える、仕事があるという状況を作った。さらにUIJターン就職、起業する人へ最大300万円の支援を行うことで、これを進めていきたいと思う。』

 

石破さんの回答

『「均衡ある国土発展」はずっとキーワードであった。経済が伸びて、人口が伸びていく時は、どこが同じことをやっても伸びていった。同じものを安くたくさん大勢の人で作るというビジネスモデルはいまの日本には向かない。そして、必要な公共事業はやるが、昭和40年代・50年代と同じことはできないと思っている。そうすると、その地域にしかないものをどうやって伸ばしていくか。日本全体1718ある市町村において、個別に成功事例はいっぱいあるが、それを横に広げていくための仕組みが必要である。

 人生80年時代、「地方に帰って第2の人生を送りたい」と東京にいる50代男性の半分が考えている。地方にはそういう人に帰ってきてほしいというニーズがある。それをどうやってマッチングをさせていくか、一緒にやろうよという気持ちになってもらえるか。それを拡大、充実させていけるように、政府は仕事をしていかなければならない。そのためのシステムを作る必要がある。』

 

司会→両候補

『「地方創生」に関しては「大都市vs地方」という文脈で語られることが多いが、日本の場合、5000万世帯のうち1000万世帯が過疎地域に住んでいるという状況があり、地方の中でも中核都市と過疎地域という2重構造がある。国の生産性を上げていくという観点からすると、「中核都市vs過疎地域」という構図をどのように直していくかというのも地方創生の一つの大きなテーマだと思うが、どのようにお考えか。』

 

安倍さんの回答

『もちろんそういう視点は大切だが、まずは地方に人が留まるようにしていくことが一番大切である。人材が都市圏にどんどん集まるという流れを変えていくということだが、幸いに現在、中小企業や小規模事業者は地方が中心であり、これらの倒産件数は(2012年に)政権交代して、3割減少した上、地方の有効求人倍率、正規の有効求人倍率も良くなってきた。また、「地方に帰りたいと思う人と、地方側とのマッチング」に関しても現在、政府はやっている。大企業のOBの皆様に協力してもらって、全ての都道府県にその人材拠点を設置し、都市部の人材を地域の中堅・中小企業にマッチングをして、まだ3800人ではあるが、始めたばかりとしては現在成果を上げている。この取り組みを進めていきたい。』

 

石破さんの回答

『日本の面積の7割は深林である中で、どうすれば深林がお金を生むようになるかということを考えていかなければならない。この国にはヨーロッパでは当たり前の木造の大型建築はほとんどない。過疎というマイナスをプラスに変えていき、所得を生んでいくかという発想をしていかなければいけない。やり方としてはたくさんあるはずであり、そのための人材を地方へという流れを作る必要がある。』 

 

安倍さん

『極めて具体的な政策が必要だと思っている。なぜ地方から人が離れていくかというと、まず「仕事がないという問題」、「後継者がいないという問題」にも直面していく。そして、私たちは「事業承継問題」という大きな問題(地方だけでなく東京も同様だが)に立ち向かった。事業承継税制を行い、贈与税相続税の支払いをゼロにするという思い切った税制を作った。これは親子という関係ではなく、別の方でも可という仕組みになっているため、地方から大切な老舗がなくなっていくということをこれで防いでいきたい。そのために事業引継支援センターを47全ての都道府県に展開をしてマッチング機能の強化をしている。そうした具体的な政策を打っていくことで、地域を活性化させていきたい。』

 

石破さん

『これは経済界の協力なくしてできない。定年後に何かやりたいという人は多くいる。そういう人たちをリスト化し、募集している仕事の紹介をするということを合わせてやっていく仕組みづくりが必要。経済界も地方も自治体も、みんなが協力をして地方で第2の人生を作る、と同時に、東京に建てた家をどうするのか、奥さんと一緒に暮らせる対策もしていかなければいけない。どうしたら地方に帰れるようになるのか、そのための仕組みをきちんと早急に立ち上げる必要がある。』

 

安倍さん

『あともう一点、地方、特に過疎地は第1次産業である。これをいかに再生産に取り組めるようにしていくかが大切である。「守るためにも攻めなければいけない」と考え、農林水産物の輸出に力を入れた結果、5年連続で過去最高を記録している。

 林業についていえば、森林バンクを作り、まさに産業としての林業の見直しをしていくと同時に、森林環境税を作って、守るべきものは守理、攻めるべきものは攻めていくという体制をとった。

 農業についても、農地バンクを作り、農地の集積を行い、しっかりと競争力のある農業に変えていった。漁業についても、大きな改革に取り組んでいきたいと考えている。』

 

司会→両候補

『両候補ともなるべく今の形を維持しながら生産性を上げていくことによって、過疎地はより過疎にならざるを得ない、ただ、大都市と東京のバランスを少し調整しながらなるべく今の形をしながら日本を安定させていくという理解でいいか。』

 

安倍さんの回答

『だんだん衰退するのを必死で食い止めるということではなく、地方の持つ魅力によって、「東京から地方へ」という流れを進めるべき。今の若い人たちで「自分の人生を豊かにするために、東京よりも地方で生活したい」と考える人は徐々に多くなっている。今後もこの流れに期待する。』

 

石破さんの回答

『「やりっぱなしの行政、頼りっぱなしの民間、全く無関心の市民」が三位一体となれば、地方創生はできないと思う。地域経済分析システム(RESAS)の導入により、1718市町村で「人・モノ・カネ」の流入流出の分析を行えるようになった。この分析無くして町が蘇ることはない。町が蘇るためにどうすれば良いのかということは霞が関で分かるはずがなく、そこの町でなければ分からない。その町がこうしていくことが自分の町が蘇るのだという決定に、中央が最大限の支援をする。つまり、東京が作ったメニューをやるのではなく、地方がやりたいということを中央がいかに応援するかということで、今までとは全く仕組みが違うものである。』

 

◆最後に言い足りなかったこと、視聴者に伝えたいこと

 安倍さん

『来年は皇位継承、そして、世界の指導者が集まるG20サミット、さらにその先には、東京オリンピックパラリンピックと、日本は大きな歴史の転換点を迎える。今こそ未来を見据えて、新しい国づくりに向けて大きく踏み出すとき。国の形、理想を語るのは憲法である。しかし、戦後70年1度も改正されなかった、国民投票も1度も実施されなかった。我々国会議員はその責任を果たすべきである。国民の皆様に対してどういう国を作っていくのか、憲法改正案をお示ししていく。そして、平成のその先へ向けて希望に溢れた誇りある日本を切り開いていく決意を示していきたい。私はその先頭に立つ決意である。』

 

石破さん

『このような(討論の)機会をもっとほしいと思う。総理の負担を減らしつつ、主権者たる国民にいろんな考え方を伝えていくというのは、民主主義の基本であると思う。できればこのニコ生を通じて、党首討論が行われ、どんどんと議論、理解が深まっていくことを願う。民主主義は結果も大事だが、プロセスがとても大事だと思っている。民主主義が機能していくためには、できるだけ多くの人が参加し、その人たちがきちんとした知識を持つこと、お互い尊敬しながら相手の意見を理解しようとすること、そういった場の提供が最も大事なことだと思っている。そうした討論の場がもっと行われて、主権者の方々とともに日本の国を作りたいと思っている。』

  

 

 以上が2018年9月16日にニコ生で放送された自民党総裁選ネット討論会」の内容です。

 下に動画のリンクを貼っておきます。

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