政治経済

民間企業の社会人1年目が様々なトピックで言いたいこと言っちゃうブログです。

『最低賃金』どない思てる?

 

「速やかに最低賃金1500円にする!」

 

「5年以内に最低賃金1300円にする!」

 

 

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こんな主張をしている政党がありますよね。

 

 

最低賃金1500円」

 

 

そりゃ働く側としてはありがたい話ですが、実際どうなの?

 

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今回はこの疑問を事実や研究などいくつかの視点から、最低賃金引き上げ』の是非を段階に分けて深堀し、考えていこうと思います!

 

皆さんも考えるキッカケにしてください。

 

 

それでは皆さん。『最低賃金』の話、深掘っていきまーす。

しかし、最低賃金とは実際どのようなものなのでしょうか。
最低賃金』の正体を確認してみましょう

 

⛏深掘り0段階

最低賃金』の正体

 

 

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最低賃金制度とは


最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金以上の賃金を支払わなければならないとする制度』です。

 

最低賃金制度の目的とは


最低賃金法の第1条 (目的)
『この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。』


つまり、どういうことかと言うと、

 


『低賃金労働者に対して、職業や地域に応じた最低限の所得を保障して「労働条件の改善」を狙う。また、それが「生活の安定」や「労働力の質的向上や事業の公正な競争確保」、「国民経済の健全な発展」に良い影響を与えることになる。』ということです。

 

それでは日本の『最低賃金』の状況はどうなっているのでしょうか。

深堀していきましょう。

 

 

⛏深掘り1段階

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最低賃金における日本の現状

6月閣議決定『経済財政運営の基本方針2019・骨太の方針最低賃金について「より早期に全国加重平均1000円を目指す」方針が示されました


最低賃金はここ最近の緩やかな景気回復を踏まえ、3年連続3%超の引き上げを行なっている。
最低賃金引き上げは、分配政策としてだけでなく、経済政策としても期待される。
OECD諸国の最低賃金を所得中央値に対する割合で見たとき、日本は国際的に低い水準にあると言える。
◯地域別最低賃金は、都市部(関東、東海、近畿など)では高く、地方部(東北、四国、九州など)では低くなっており、最低賃金格差が顕在。


という背景があります。

 

さて、ここまでで確認した事を念頭におき、『最低賃金』を引き上げることで、どのようなことが起きるのか見てみましょう。

 

 

⛏深掘り2段階

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◆『最低賃金引き上げ』で生じると想定される2パターン


Aパターン
◯消費拡大、デフレ脱却、貧困格差の是正、生産性向上、事業の公正な競争


Bパターン
◯未熟練労働市場における雇用減少、雇用の流動性の停滞

 

要するに、

この2パターンは『最低賃金引き上げ』により起こる「期待面」と「懸念面」です。

「期待面」では、最低賃金引き上げのコストを企業や政府や消費者が負っています

「懸念面」では、最低賃金引き上げのコストを低賃金労働者が負っています

 

このどちらに転ぶのかについては、専門家や有識者によって主張がバラバラであり、永遠の議論のようになっています。とはいえ、その中でも「共通の意識」としてあるのは、最低賃金の引き上げはすべき』ということです。

 

では、何が主張・議論を分けるのか。その一つが

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最低賃金を漸進的に上げるか、急進的に上げるか』

 

の違いだと思います。

 

実際に、各政党の『最低賃金』についての公約は以下の通りです。

 

自民党は「年率3%をめどに引き上げ、全国平均1000円を目指す!」

公明党は「年率3%以上をめどに引き上げ、2020年代前半に全国平均1000円超、2020年代半ばに47都道府県の半数以上で1000円以上を目指す!」

立憲民主党は「5年以内に1300円にする!」

◯国民民主党は「全国どこでも1000円以上を早期に実現する!」

共産党は「直ちに全国どこでも1000円引き上げ、速やかに1500円を目指す!」

日本維新の会は「記載なし」

社民党は「全国一律に転換し、1000円に引き上げ、1500円を目指す!」

 

このように『漸進的』『急進的』にはっきり分かれているのは一目瞭然ではないでしょうか。

 

さて、最低賃金の引き上げはすべき大前提として、主張・議論を分けるのが『漸進的』『急進的』の違いだけかというとそうではありません。

 

では、他にどのような違いがあるのでしょうか。

 

⛏深掘り3段階

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◆国際的な先行事例

雇用と最低賃金の関係から、海外で見られた成功と失敗の各事例の要点を取り上げていきたいと思います。

 

イギリスの成功事例

1999年〜2019年の20年間で最低賃金が4.61ポンド、現在(2019年9月6日AM1:33)の日本円換算で607.8円上昇しました。これは当初の2.3倍になります。

この間の失業率は2008年以降の金融危機や欧州債務危機で上昇したものの、最低賃金の大幅な引き上げがあった2000年代初頭にはむしろ低下していました。したがって、イギリスでは最低賃金の引き上げが雇用抑制を招いて、失業の増加に繋がったとはいえないという結果になっています。

 

では、イギリスで『懸念面』が顕在しなかった主な理由とは何なのでしょうか。

 

<イギリスで『懸念面』が顕在しなかった主な理由>

①賃金引き上げが景気に配慮し適切に調整されたこと

②企業が雇用コストの上昇を生産性向上で補ったこと

③流動化した雇用が職業訓練によって質の高い労働力として市場に戻されたこと

負の所得税の考え方に基づく給付付き税額控除の仕組みが導入されたこと

⑤④より失業時に最低限の生活水準が保証されるセーフティーネットが強化されたこと

 

つまり、期待面を顕在化させるためには、『最低賃金引き上げ』だけでなく、それを補完する労働市場改革や社会保障制度改革が必要であるということです。

 

◯韓国の失敗事例

1988年から比較的大きな引き上げが毎年実施されてきました。とりわけ、ここ最近の引き上げは凄まじく、2017年〜2019年の2年間で最低賃金が1880ウォン、現在(2019年9月6日AM1:33)の日本円換算で167円上昇しました。これは2年前の1.3倍になります。

この間に失業率が上昇し、実体経済を悪化してしまっています

では、韓国で『懸念面』が顕在した主な理由とは何なのでしょうか。

<韓国で『懸念面』が顕在した主な理由>

①経済の実情を反映しない急激なペースで最低賃金が引き上げられたこと

法人税率引き上げ規制強化という反企業的政策が行われたこと

 

つまり、所得分配に偏った(経済政策の視点がない)政策が企業負担の増加に繋がり、経営効率改善に必要な政策的支援や時間的猶予が与えられなかったことが原因と考えられます。

 

以上を踏まえたとき、『漸進的』『急進的』以外の違いとは

 

最低賃金引き上げを補完する労働市場社会保障改革』

 

になるのだと思います。

 

 では、本丸の議論である、日本で最低賃金引き上げをするときの留意点は何なのか。そこを深堀していきましょう。

 

⛏深掘り4段階

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◆日本で最低賃金引き上げをするときの留意点

注意したいのは、留意点を考えるとき、日本のもつ事情(雇用制度や慣行、経済環境、労働市場、労働者の属性、企業の特徴)などを慎重に考慮して、留意点を考えなければならないということです。

 

一例として、『企業』『パートタイム労働者』についてです。

 

最低賃金引き上げによる影響は、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、卸売業・小売業などで大きく、パートタイム労働者比率と高い相関が見られます。また、規模別には、小さな事業者ほど影響を受けやすいということも分かっています。

このような一つ一つの事情を鑑み、留意点を考えていく必要があると思います。そうでないと、実態にそぐわぬ政策を打って、日本全体に悪影響を与えてしまう可能性があります。

 

◆留意点

◯経済実勢に見合わない引き上げをしないこと

◯企業に生産性向上を迫ること

◯雇用の安全網を整備すること

◯全国一律の数値目標よりも企業の市場環境に則して行うこと

 

では、上記の4つの留意点について、具体的な方針は何でしょうか。一つ一つ確認していきます。

 

⛏深掘り5段階

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◯経済実勢に見合わない引き上げをしないこと

→経済の実情を常に反映させていくということです。この点、現政権が行う毎年約3%を年率3%をめどにした引き上げは理にかなっていると思います。

 

◯企業に生産性向上を迫ること

→研究開発減税の拡大、多方面においての規制緩和、積極的な外資誘致政策、非効率な企業の経営統合や廃業促進

 

◯雇用の安全網を整備すること

→最低限度の生活を保障するセーフティーネットの充実、労働の質を高め雇用の不適合を小さくする教育訓練プログラムの導入、労働の誘因を高める税制改革

 

◯全国一律の数値目標よりも市場環境を確認すること

→企業が人件費の上昇分を製品価格に上乗せできれば、雇用量を削減する必要はないことから、その企業が製品価格を上げられるかを慎重に判断することです。

 

 

というのも、『国内の最低賃金制度の適用を受けない海外のライバル企業が多い市場』では、自社だけが価格を上げると顧客を海外企業に奪われてしまうため、国内企業は製品価格を上げられない。

一方で、『ライバル企業の大多数が国内に位置し、同様の最低賃金の適用を受ける市場』では、どの企業も状況が同じなので、人件費の上昇分を製品価格に転嫁しやすい。

このような事柄も踏まえ、慎重に各市場に属する企業の実情を考慮することです。

 

⛑私の意見

 

最低賃金1500円」という公約以外にも、財源や具体的施策を示さない公約は山のように見られます。まあ、そういうことを恥ずかしげもなくやるから、「あの政党が大嫌いだ!」という気持ちが生まれてくるのです。

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ただ、そこで思考停止に陥らず、事実はどうなのかを「自分なりに探してみる」ということは大事だと思います。要するに、ファクトチェックしてみるということです。

 

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そうすれば、一つのテーマに対し、一定の自分の意見をもつことができるようになります。しかも、自分なりにファクトチェックしているため、簡単に論破されにくいです。論破されそうになっても、ある程度調べている分、対抗することができます。

 

「論破するために自分の意見を持つ」ということは全く推奨していませんが、言論を戦わせるくらいの気概を持った意見を言える方が、何かしら何となく多分良いのではないでしょうか。

 

 

 


最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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<参考文献>

・ニッセイ基礎研REPORT August 2019 p.04-05

・2019.9/2,3日経新聞最低賃金1000円の是非(上・下)」

厚生労働省HP「最低賃金制度の意義・役割について」

・アティラ・リンドナー英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン講師らによる研究「Who pays for the minimum wage?」

 ・厚生労働省HP「最低賃金制度の概要」

・jiji.com HP「参院選2019・最低賃金の現状と公約」